先週末大学のサークルの同期と旅行に行ってきたときに、就職先の話題になって、意外とSEになる人が多いということを知った。先輩達もそうだけど、同期の皆も、世の中というものに疎い俺ですら聞いたことのある大企業に就職していく。ここで名前を挙げるのが憚られる程度には名の知れた大手SIerばかり。

タイムリーにもIT業界ってどうなのよ?って話題が盛り上がってるみたいだし、彼らが情報技術にとりたてて興味があったという話も聞いたことがなかったので、すこし気になった。で、何故その職を選んだのかとか、将来的にどうして行きたいのかとか聞いてみた。その彼らが口々に語る夢――より正確に言うならば、計画――を聞きながら、少しだけ暗澹とした気分になった。「最初は現場で1、2年プログラミングの経験を積んで、その後は出世して上流工程をしきるんだよ」「俺は金融の専門家になるんだ」「私、パソコンとか全然わかんないけどこの仕事になっちゃった」「ああ、俺も俺も。あんまよく知らん」「技術を極める人はすげぇと思うけど、別に俺はそれをやりたいとは思わないし、実装だけやってる人に将来性ないよね」「ていうか、実装は下請けの会社がやることで俺らがやることじゃないよな」…etc。

ああ。スーツの世界がそこに広がっているのが見えた。そこそこのネームバリューのある大学名を背負い、逸般人の俺なんかが持ち合わせていないコミュニケーション能力とやらを駆使して、彼らは社会を動かしていくんだ。技術的な素養も情熱も理解も無いままに、政治力と資金力とスーツがものを言う世界でさ。

いや、俺や俺の周囲の環境が(少なくとも今現在の日本では)特異なのは理解してる。Web系とSI系じゃやってることなんか全然違うだろうし、「趣味グラマが叶える夢」と「選択肢の一つとしての職業的SE」じゃ見据えてる将来も全然違うだろうし。それ以前に、「優秀な」彼等と「変人の」俺とはそもそも住む世界が違ってて、たまたま同じ時間同じ空間で歩んできた道が交わってしまっただけなんだろうし。だからそのとき感じた違和感や憤りやなんかをどうしたいとも、思わない。

けど。

ああ、こいつらとは一緒に仕事をしたくないな、と思ってしまった。まぁ多分一緒に仕事をしてくれと頼まれる日も来ないだろうとは思うけども。

追記

思ってた以上に反響が大きかったので多少の追記を。

まず、SIerなどと一括りにしたけど、もちろんSIerにもはりぼてのスーツばかりじゃなく素敵なエンジニアは山程いる。実際に面識のある方々は、ハッカーでギークでクリエイターで匠だった。多重孫請け構造の大手SIerや末端の零細下請け会社は酷いと「聞いて」はいる(もちろん見たわけじゃない)が、一方で自社に技術を抱えている中堅SIerは技術力もエンジニアの意識も高い「らしい」とは「聞いて」いる。

それから、WebとSIは違うと言ったけど、当然ながらWeb系でもどうしようもなく能力や意識の低い連中を見たこともある。というか、SIやら組み込みやらより技術的な敷居は低いんじゃないってブコメの指摘はもっともで、敷居が低い分下限も低かったりして、SI系が「なんとなく金になりそう、出世できそう」ならWeb系は「なんとなくカッコよさげ」って理由だけで入ってくる人もいるしピンキリって意味ではどっちもどっち。

たまたま俺は、マッドエンジニアを自認する師匠と出会えて、その背中を追うべき匠たちと交流を持たせてもらってる。今働かせてもらってる会社には、俺なんかじゃ足元にも及ばないような超人や超変人が跋扈していたり、刺身にタンポポを乗せるどころか自分で舟盛りでも作りかねないマークアップエンジニアがいたりする。そんな幸運を享受しているからこそ、彼らの発言を呆れたものと認識できたし、自分は意識を高く保っていようと自戒することができた。でも、もしそうじゃなかったら、もしかしたら彼らと同じようなことをのたまってたかもしれないし、あるいは彼らが乗っているレールから足を踏み外して、あごで使われてるかも知れない。

つまるところどっかがおかしいんだろうな。学生がアホなだけでなく、文鎮がじゃまなだけでなく、もっと全体的に根本的に。なんとかならないかな。なんとか、したい。「どうしたいとも、思わない」なんて言ってないで、状況を変えるために今後何かして行けたらな。