As Sloth As Possible

可能な限りナマケモノでありたい

タグ:SBM

クリップの開発日誌で告知したけど、livedoor クリップのiPhoneアプリが出たよ。マイクリップ、ウォッチリスト、人気のページ、人気のニュース、人気のブログの新着を一覧表示ができて、それぞれのクリップされたページをWebViewで表示、コメントをオーバーレイして表示、等ができるアプリでございます。

それにしても出るまで長かった。βテスター募集したのが10月の頭、それからアプリ提出するところまでに2週間、一度Appleに提出したバイナリを消され(向こうの手違いらしい)、一度審査落ちて再提出し、審査が通ったのは11月の頭、そこからPending Contractで(ry。審査通ってから一ヶ月待たされたのはいかんともしがたいのだけど、まぁそれを置いといてももっとサクサク開発できたらなぁと痛感する次第。…頑張ろう。それからβテスターの方々、本当にご協力ありがとうございました。

現状では実はアプリ側では認証とかしてなくて、言ってしまえばまだiPhoneちっくなUIのクリップ専用のRSSリーダでしかないんですが(プライベートで使ってる人がこのアプリを使えないのはそのせい)、次期バージョンアップでプライベートモードへの対応と、アプリからのクリップ編集くらいを対応しようと思ってるところ。それから、新着だけでなく遡って過去のクリップを見るとか、オススメクリップの一覧を出すとかはする予定。次期に取り込めるかはわからないけど。

バグとかUIの改善とか要望とか、何かあったら言っておくれやす。俺にでも、クリップのサポートにでもいいので御気軽に是非!

つまり、一部のヘビーユーザーの嗜好が強く反映されすぎると、新規ユーザーの開拓が阻害されるかもしれない。

それならば、ヘビーユーザーの嗜好を運営が否定していいのか。

否定していいはずがないし、少なくともはてなはやらないだろう。このまま流れに身を任せるだろう。その結果このようなエントリーだらけになってしまったら、さすがにライブドアクリップやdeliciousにユーザーが流れると思う。
運営の手でCGMサイトにおけるヘビーユーザーの影響力を薄める行為の是非が問われているのかもしれない。
SBMのゆくえ 〜運営がヘビーユーザーの影響力を薄めるべきか〜 - Core

クリップに流れてきてくれる分には俺としては嬉しいけど、それはまぁそれとして、ちょっと思うところがあったので色々考えてたらまとまらなくなったので書きながら考えることにする。

偏って欲しいわけはない

本気で「集合知」だとか「Web 2.0メディア」だとかを掲げて、新しいメディアの形なんですって方針でビジネスをやるんだとしたら、今の状態はどう見たってアリかナシかでいうとナシだろう。大体いつ見ても、はてブでは揉め事や増田の記事が目に付くし、クリップなら2ちゃんまとめが結構な頻度で上がってくるし、どこのSBMでもPHPだCSSだPhotoshopだギークだアルファブロガーだライフハックだ、って記事が上がってきやすい。もちろんそれだけじゃないけど、偏りがあるのは事実だ。で、友達にそれだけ見せて「これ何が面白いの?」って聞かれたら上手く説明する自信がないし、ましてやばーちゃんに、親父に、妹に、勧められるかと問われたら難しい。

なぜそうなのかは、もう仕組み上そうだからとしか言いようがない。ある種類の人々に特に好かれるサービスだから、放っておけば勝手に特定の傾向に偏り始めるし、またその手の人々に影響されやすい人やランキングを見た人がそのランキングを補強し、そうして出来た偏りのあるランキングに魅かれてやってきた人ってのもまた同じような偏りのあるポストをする。そうして繰り返し補強される偏りのスパイラル。フォークソノミー的なものの実験としてはSBMは失敗だったと見ていいと思う。

加えて、スパム業者という連中は貪欲で、そこに露出する場があると見るとどんなとこにでもやってくる。お前らほんともういい加減にせーよってくらいあの手この手でランキングを操作しようと頑張ってる。いかがわしい商品を売り付けようとする奴らもそうだけど、最近だとSEOだなんだって言って顧客をそそのかしてツールを売り付けたりゴミPOSTでPVを稼いでほら効果がでましたよ、なんてやってるろくでもないのがいたりして、日々そういうのを相手にしてるとなんだかやりきれない気持ちになってくる。

結局、放っておいて自然に「新しいメディア」や「知の集積」ができるはずもないので、それをやりたいのであれば「運営がコントロール」するのは必然。是非が問われる、とかじゃなくて、そうせざるを得ない。それが当初の思想、「"みんな"が"みんな"へ発信するメディア」に矛盾するとしても、だ。

本当に「人気ページ」を見てもらう必要はあるのか

そういうわけで、偏りは好ましくないし運営サイドがコントロールしなきゃだめなんだろうとは思うのだけど、ただ個人的には「好ましくないが致命的ではない」と考えている。致命的でないというのは、放置していいということではなくて、他のことを優先したほうがいい、という程度の意味でだけど。何故かと言えば、そもそもSBMが「"みんな"から"みんな"へ」のメディアだなんて思ってないから。

そもそも構造的欠陥がなくて、スパマーは駆逐されていて、皆が冷静で賢明だったとして、それでじゃあ有益で面白い情報が効率的に集積されたかというと、きっとされないと思う。万人が選ぶ万人の為の情報なんて、当たり障りのない情報だけが集まるか、いろんな情報がバランス良く集まるか、どっちにせよ取り立てて面白くないだろうし、結局その「バランスのいい」情報の塊を自分でフィルタリングするはめになるだけだと思う。

つまるところ「人気ランキング」なんてのは、勝手に偏るか、集計者に都合のいい方向に偏るか、偏らないが故に意味を為さないか、どれかでしかない。だから然程重要だと思わない。いや、言い直そう。俺(もしくはあなた)にとって重要なものにすることはできるけど、みんなにとって等しく重要なものにはできない。「面白い」も「有益」も見る人によって価値が違うのだからそんなものだなぁと思うし、だから"みんな"から"みんな"へは無理があるんだと思う。

「みんな」じゃなくて「誰か」の言ってることを聞ければいい

他のCGM系のサービスを考えてみるといい。ブログを見るとき、そのブログサービスのランキングに上がってくるものを片端から読むか。SNSでフレンドが多い人の記事を片端から読むか。ミニブログでパブリックタイムラインを全部追うか。いやまぁ、「全部を見る」のが仕事だったり趣味だったりする人がぱっと何人か思い浮かぶには浮かぶけど…それはそれとして、普通は特定の気にいった人のブログを定期的に読むし、SNSでは身近な友人と慣れ合うし、ミニブログでは同じクラスタで固まるよな、と。

SBMもそれと同じで、「みんなが決めた人気の記事」を追うよりも、その分野では誰より鼻が効くあの方や、何故かいつも自分がブックマークする記事をブックマークしてるあの人や、毎回気の効いたコメントしてるあいつ、のリストに注目してた方がずっと面白い。その方が、人気はないけど凄く面白くて為になる記事に出会えたり、ブクマ数だけ多いけど全然興味がない記事にあたってしまう確立を下げたりできる。もちろんランキングや新着はそれはそれで面白い人には面白いんだけど(実際俺は増田も非モテもまとめブログもWebデザインもライフハックも割と好きだけど)、ニュースソースやネタの狩り場にするには精度が低すぎる。

つまるところ、SBMは"みんな"の意見・情報を集約して"みんな"に届けるシステムではなくて、"誰か"の意見・情報を"誰か"に届ける「個人から個人へ」のシステムなんだと思う。"みんな"の知識なんて、言われている程集約するものではない。集約させる機能は、あくまでSBMの一側面に過ぎなくて、現状はそれ以上に他の側面の方がより有益だろうと思う。

結局何が言いたいのかというと

ホッテントリが偏ってるって話は、ランキングが面白くないとか、運営が調整すべきかどうかとか、そういうことじゃなくて、他の面白い側面よりもランキング的なものの方に目が行きやすいから、いかにして他の側面をアピールできるか、ということの方が本当の課題だと思う。SBMでは必ずしも数字やランキングが、主軸ではないので。

例えばクリップはしばらく前からコメントを全面に押し出すようにして、ウォッチリスト(お気に入りリスト)の見栄えをミニブログのタイムライン風にしてみた。Buzzurlはグループで小規模なSBMとして使えるようなBuzzurl Plusというサービスを出していた。これも出たのはしばらく前だけど、「注釈」にフォーカスしたコモンズマーカーとかも面白い(SBMと言っていいのかは微妙だけど)。それから、はてブそうだけどクリップも、最近はレコメンデーションに結構力を入れてる。これは「みんなへ」じゃなくて「あなたへ」の方に力を入れたくてやってる。

つまりだね。みんなウォッチリスト/お気に入り活用してね、ってのと、ランキングばっかり見てないで他の面白い使い方見つけてくれると嬉しいな、言ってくれれば色々やるからさ、ってとこですかね。

livedoor クリップのadd/editの画面をちょっと変えました。既にコメントが付いてるページをクリップしようとすると、追加/編集画面でコメントが読めるようになります。

それはそれとして、画面の要素が変わったのでそれに何か手を入れるグリモンが動かなくなってるはず。とりあえず俺も愛用してるlivedoor clip cross postも動かなくなったので、ちょっといじってみた。

addForm : function(){
    var elem = document.getElementById('addclipsecondbox');
    var html = '<tr>'
             + '    <th>Cross Post</th>'
             + '    <td id="enableCrossPost"></td>'
             + '</tr>';
    var dummy = document.createElement('table');
    dummy.innerHTML = html;
    elem.appendChild(dummy.childNodes[0]);
},

こうなってるところを

addForm : function(){
    var elem = document.getElementById('AddClipsBox').childNodes[1];
    var html = '<dl class="NormalLIst">'
             + '<dt>Cross Post</dt>'
             + '<dd id="enableCrossPost"></dd>';
    var dummy = document.createElement('li');
    dummy.innerHTML = html;
    elem.appendChild(dummy);
}, 

こうすることで、動くようになります。クリップメインではてブやdel.icio.usにクロスポストしてて、「livedoor clip cross post動かなくなった!どうしてくれんだこのやろう!」って人はやってみて下さいな。

元記事にならってホッテントリメーカーでタイトルを付けてみた。変身願望とソーシャルブックマークの共通点はちょっと面白そうだが、内容は全く関係ない。実はもっと良いタイトルがあったんだけどあとで本当に書きたいので使わなかったのは内緒。

それはともかく、ぼくが「はてなブックマーク」を使う際に注意している点は、こんな感じです。
1・「新聞記事」にブックマークしない(何か月か経つと消えてしまうので)(追記:必要ならば自分の日記に引用して言及する)
2・ネタの新旧は問わない(新しいものばかりを追わない・非時事性を追求する)
3・ネガティヴ・コメントをつけてみたくなるようなエントリーはブックマークしない(ぼくのブックマークに、あまり汚い言葉を並べたくない)
[ネット]はてなブックマークの9割はクズ(ぼくのはてなブックマークの使いかた) - 愛・蔵太のもう少し調べて書きたい日記

これを読んでてつらつらと考えごとをしてた。上記の3点はわかるんだけど、俺この辺のことに拘らず使ってるなー、てか今後も拘らずに使うんだろうなー、と思ったので。うーん。なんでそこに拘らないんだろ、と考えてみて、俺にとってのSBMって「情報集積のためのツール」とは限らないからなんだろうなーと気付いた。SBMにとあるページをポストする理由として、自分に思い当たるのはこんなところ。

  1. あとで必要となるであろう情報を参照しやすい形で整理
  2. 自分が見た情報を、(特定の、あるいは不特定の)誰かに自分の何らかの意思表示を添えて教える
  3. 単に「この話題に興味を持ち、見た」という印

あとで必要となるであろう情報を参照しやすい形で整理

俺にとっては技術系の情報とか面白そうなサービスとかをクリップするときがこのケースにあたる。イメージとしては、辞書や百科事典に新しい項目を追加するような感覚。これをするときは、タグも慎重に選ぶし、コメントするにしても「コンテンツに対する付加情報」になるようにする。何故ならばそのコンテンツが「あとで自分で見返す」ことや「誰かの情報検索の網にひっかかる」ことを想定するから。フォークソノミーとかそういうあれ。あと、自分でネガティブな評価を下したものをこの目的の為にクリップするとはあまりない。あんまりにも酷い事例を反面教師にするために入れることはあるかもしれにあけど、通常は評価の低いものを敢えてデータベースに入れることの価値は薄い。ノイズが増えるだけだから。

自分が見た情報を、(特定の、あるいは不特定の)誰かに自分の何らかの意思表示を添えて教える

このケースにあたるのは、ニュース記事やネタ記事、ニコ動の動画、ネット上の揉め事、自社や自分の作ってるサービスに関わりのある話題など。この場合、タグはかなり自由に付けるし、コメントも感情や意見を入れるし、ページが消える可能性があるとか時期を逃すと意味が薄れるような「旬がある」コンテンツであることも多い。

注意が向くのは「自分の、あるいは全体の、『SBMというデータベース』においてどういう意味を持つか」ではなく、「『このエントリを見る人』にとってどういう意味を持つか」。友達や会社の同僚はもちろんのこと、俺のクリップやはてブをお気に入りやRSSリーダで読んでるどこかの誰か、もっと拡大してホッテントリや新着をウォッチしてる人に対して「こういうコンテンツがあり、俺はこう思うんだけど、見てみない?」というオススメのつもりなんだな。重要なのは、この側面においては「個性溢れるタグ付けもネガコメも時間軸が意味を持つコンテンツも、意味がある」ってこと。

単に「この話題に興味を持ち、かつ見た」という印

これはもう、そのまま、文字通りクリップ。上記二つに該当しないコンテンツなのにも関わらず無意識にブックマークレットに手が伸びてることが良くあるんだけど、それらの全てが多分知らず知らずにこの目的にかなってる。もちろん、上記二つに該当しているものも、「クリップした」時点でその意味を持つ。

これが何の役に立つかと言うと、例えば俺のクリップを見るだけでも、「この人は多分Web業界の人で、MacでRuby書いたりしてるんだろうなー」とか「電脳コイルとかアイマスとかが好きなヲタ気味の人なんだろうなー」とか「アジャイル(笑)とかオープン(笑)とかは好きみたいだけど、スーツ(笑)とかスイーツ(笑)とかにはやたら噛み付くなー」とか、そういうことが読み取れる。あるいは、自分と同じコンテンツをクリップしてるようなら、特に前置きをしなくてもある話題について話せる可能性が高いな、と推測する材料にできる。さらに、人のだけでなく自分自身で見ても、「あー俺あんときあのアニメにハマってたんだなー」とか「多分あれの勉強し始めたのこの時期かなー」とか思い出せて結構楽しい。

つまりどういうことかというと、沢山クリップしてる人はその人のリストを見るとなんとなく人となりが想像できたりするわけだ。んでもって、ここでも必ずしも「タグがコンテンツを正確に分類しているか」や「記事が時間経過に関わらず参照可能か」ということは重要ではない。

SBMのSはソーシャルのS

SBMの意味や使い方が語られるとき、特にフォークソノミーとかレコメンデーションを研究してる人や、俗に言うライフハックが好きな人の口から語られるときは、1の要素が重要視される傾向が強いような気がしている。あれだ。「集合知」ってやつ。ただこれ、今現状のSBMでは本当の意味で実現するのは難しいと思ってる。なんでかと言うと、そこにいるユーザが全体で「意識的に」「厳格に」この使い方を目指さないと精度が上がらないから。さらに、これは作り手としても反省点なんだけど、UIの問題で過去の資産を使い易い作りになっていない。ぶっちゃけ、ググった方がはえーよな、と思ってしまったりする。いや、直したい。これに関してはもっと上手いUIにできたらな、と思うんだけど、現状としてはそうなのは事実。

一方で、2や3に関しては、ユーザ各々がかなり自由に振る舞っても、面白いものが集積されうると思うし、実際はてブとか見てるとそういう風に使われてるように見える。それに加えて、はてブ・LDクリップ・Buzzurlあたりに最近どういう機能追加の傾向があるかも見てみると面白いよ。さて、SBMのSってなんだろう。SBMのSは1の意味では「集合知の形成、集団の行動が起こす現象」を意味してるんだけど、2や3ではもっとストレートに「コミュニケーションや自己表現」という形で表れてくる。だから、1の目的のためには「気を付けるべきこと」がそれ以外の目的のためには「気を付けててもいいかもしれないね、くらいのこと」になるんだよな。

まとめ

大分あっちこっちに思考が飛びそうになってきたのでそろそろ纒める。別に元記事に異を唱えたくてこのエントリを書いたわけではなくて。重要なニュースへの参照を残しておきたければいずれ消える元記事ではなくて魚拓や引用記事をクリップした方が情報としては有益だし、ちょっと論点が違うけどprotectedなURLをクリップするのとかも個人的には好きじゃない(ニコ動はprotectedだけど、はてブやクリップ上で再生できるのでありかなと思ってる)。ネタの新旧拘らず良い情報を拾ってきてくれるユーザが増えれば皆嬉しい。ネガコメ云々は色々面倒くさそうなので言及しないけど「ぼくのブックマークに、あまり汚い言葉を並べたくない」は一個人の方針としては素敵だと思う。だから、それはいいと思う。どんどんやって欲しいと思う。

そう思った上で、時間経過すると参照不可能になったり、クリップする当人がネガティブな評価を下しているコンテンツであったりしても、「それをクリップする行為」は十分に意味のある「情報」であると考えたので、そっちもどんどんやってくれればいいなぁと思った。長々と書いて結論は「好きに使え」かよ。おい。

今日は東工大で行なわれたSBM研究会に参加してきた。是非感想をmixiかブログに書いてくださいとのことだったので、感想と考えたことをまとめる。

とても新鮮だった

一番印象的だったのは、集まった人に結構いろんな立場の人がいたこと。SBM研究会には、大手SI企業の人、データマイニングやレコメンデーションの研究をしている研究者、Webサービスの開発者や運営者、技術好きな学生などなど。

これはとても新鮮だった。仕事柄というか趣味でというか、ここ最近技術系のカンファレンスや勉強会に何度か足を運んでいるのだけど、その雰囲気とはまるで違う。俺は興味の方向が基本的に「コンシューマ向けのWebサービス」に向いているので、普段はBtoBな業界の方や研究者の方と交流する機会は少ない。こうして同じ場に集まることで、視点の違い、空気の違いを感じられて刺激を受けることができて良かった。

印象に残った発表

どれも興味深い内容だったのだけど、専門的になるし内容も濃いので、具体的な話は発表者の方や他の参加者の方にお任せするとして、いくつか印象に残った発表についての雑感を。

ソーシャルメディアとマーケティング

発表者は学びing株式会社の横田さん。SBMの歴史をざっとなぞり、現状のソーシャルメディアはどういう状況に置かれていて、今後どう展開していくのが良いだろうかという提案だった。

まずSBM、というよりはオンラインブックマークというサービスを、del.icio.us以前の「ブレイク前」と以降の「ブレイク後」に分けて、その違いを考察。最大の違いは「ローカルのブックマークのバックアップ、ストレージであったものが、del.icio.us以降は日用のツールになった」ことだと指摘。また、評価の可視化、ブログの興隆による「パーマリンク」の増加、ソーシャルタギングなどの分類手法が「ブレイク前」とは異なる成功要因である、とも。

次いで現状のSBMの置かれている状況について。「ブレイク後」とは言え、アンケート結果によると日本では7%強程度の「ユーザ」しかいないとの事実を指摘。まだまだSBMはいわゆる「キャズムを越えていない」ものだってのは共通認識ではあるんだけど、実際に数字を見せられると流石に愕然とする。7%って。いかに自分たちがいる界隈が「濃ゆい」集団かってことを再認識せざるを得ない。もちろんこれはSBMを「ツールとして」「意識的に、能動的に」使ってるユーザの話であって、それと気付かず検索結果などからSBMに辿りついたり、実態は領域特化型のSBMだけれどもSBMと呼ばれていないサービスを使っている人は含まれていない。とはいえ、はっきり言ってまだ「あまりにもパイが小さい」のは確か。

それを踏まえた上で、現状で無理に一般層へアプローチするのではなく、「閉鎖空間」をキーワードに、一度ターゲットを狭めて存在感を高めてからより汎用的なものを目指すべきではないか、との提案があった。例えば領域特化型のSBM、イントラSBM、モバイルSBM、など。実際にニッチなSBMやイントラSBMはちらほら存在感を増してきてはいるんだけど、モバイルSBMに関しては今のところまだ目立った成功例がないみたいだし、俺も個人的には懐疑的。理由として横田さんは「mixiやモバゲーなどのコミュニティがサイト内で出しているニュースや更新情報が、PCの文化に置けるSBMの情報配信の役割を果しているのではないか」と言っていたけど、多分、単純に「SBMにポストしづらい」のが最大の原因だと思う。ブックマークレットやアプリケーションを使えないし、URLをコピペしづらいし、それ以前にそもそも携帯端末でのブラウジング中に「URL」を意識する場面が非常に少ない。そういう障害が一気に打破されるような何かが出てこない限り、モバイル文化にSBMは定着しないのかなーと思う。

ちなみに、横田さんのプレゼンはとても面白かった。内容もさることながら飽きさせない話し方が良かった。影響力がもっとも強いのはやるおなのではないか。

Webの世界に「気付き」を集積するコモンズ・マーカー

発表者はコモンズ・メディアの星さん。先日リリースされたばかりのコモンズ・マーカーの紹介。何がどう凄いのかは実際に使ってみたりyuguiさんの記事を見たりしてもらう方が早いと思うので、敢えて解説はしない。

関心したのはそのUIへのこだわり。敢えて付箋のメタファーを捨て、いかにマークとコメントを効率良く閲覧できるかを追求した話は参考になった。そうだよなぁ、他にベターな解があるなら、別に「現実にある何か」に似せる必要はない。この辺はUIの設計の話になるのでまた別の機会につきつめて考えることにする。

あと、印象的だったのは、「引用部とコメントをセットにして一つのマーカー」にする、という見せ方。引用部とコメントが対になっていることで、単体でコンテンツたり得るということ。星さんはコモンズ・マーカーを「注釈を付けるサービスであると同時に、簡単にWeblogを記録できるサービス」だと言っていたけど、これはあれだ…Tumblrに似てるんだ。ページを軸にしてマーカーを並べると、「あるコンテンツに対しての注釈・解釈」に見えるのに、人を軸にして並べると、「その人が何を見てどう思ったのかが綴られた記録」に見える。それだけでその人の個性が出てくるし、それ自体が立派なコンテンツになる。これは面白い。

ただ、見ていて思ったのは、SBMに似てはいるけど、SBMとはまた少しベクトルの違うサービスかな、ということ。今SBMが担っている役割のうち、アノテーションに大きく重心を傾けたサービスのように思える。一応、タギングなども供えてはいるのだけど、評価や分類と言った要素はメインではないし、逆にそっちに重心を戻すとせっかく新しく生まれた魅力が減ってしまう気もする。今後コモンズ・マーカーがどう発展するのか、非常に気になるところ。

パネルディスカッション

パネラーのみずほ情報総研の吉川さんが紹介した、社内SBMの導入事例が面白かった。社内SBMを導入したことで、少なくともユーザ同士は同じ情報を見たという前提を共有できていることで、議論の前段の前提の確認のための時間が減って、よりコミュニケーションに集中できるようになった、とのこと。また、導入当初は一部署で始めて、その後ユーザ数を拡大した際に「ノイズが増えて情報共有のコストが上がる」ことが懸念されたが、「むしろ他部署の動向が知れて有益」と概ね好評でノイズの増加は起きなかった、とのこと。あと、社内文書もクリップできるようにしていたが、実際には社内文書のクリップは殆どされなかった、とも。面白い。うちだったら社内にもクリップしたいリソースは山程あるんだけどなー。

それから、社内SBMを導入したみずほ情報総研、コンシューマ向けにグループ単位のSBM「BuzzurlPlus」をリリースしたECナビが共に「コミュニティを志向し、コメントを付ける文化を求めた」ことも興味深い。ここは実はlivedoorクリップチームも同意見で、今後のSBMの展開にはキーになると思っている。

その他、全体的な印象

レコメンデーションという切り口でSBMに着目している人が多かった印象。確かに、社会学や情報工学の分野の研究材料としては大変面白いデータが集積されているし、マーケティングのツールとしてもレコメンデーションは重要な要素だ。だけど、「コンテンツの評価軸としてのSBM」や「コミュニティとしてのSBM」への言及が少なかったことが気になる。これについては後述する。

あと、まぁ分かり切ってたことだけど、はてブ人気すぎ。ほぼ全プレゼン中で言及されてnaoyaさんがニヤニヤしたり苦笑したりしてるのが面白かった。ただ、まぁ、一応SBMサービスの提供者として言っておくと、「はてブの長所・欠点」をそのまま「SBMの長所・欠点」みたいに語るのはもう少し慎重になって欲しいなと思った。そこ、クリップなら違うことやってんだけど、やっぱ見てないかー、とか何度か言いたくなった。ちょっと残念。まだ努力が必要だなー。

研究会に対して不満に思ったこと

とりあえずこれだけは書かないわけには行かないと思ってたので書く。

なんでmixi?

今回のSBM研究会は、mixiイベントを使って告知され、mixiイベント上で参加者の管理が為された。また、感想もmixiで書くよう勧められ、(参加者は全員mixiのユーザーであるのが前提なので)是非mixi上で交流を持ちましょう、とも言われた。mixiがサービスとして良いか悪いかは話がそれるのでここでは語る気はないが、言いたいのは、SBM研究会という会を運営するにあたってその方法は適切だったのか、ということ。

(追記: 6月末にブログ告知とメール応募もしてたのは知ってたけど、4月時点での告知、5月末のTechTalk.jpでの告知には気付いてなかった。うわー、これは恥かしい。俺の勘違いですね、すいません。まぁでもそれでもmixiイベントでの運用と、感想をmixiに書くように勧めるたことは微妙だなーと思うので、ここの記述は残しておきます。あとTechTalk.jpは素敵すぎる。ちゃんとチェックしとこう。)

mixiは規模こそ巨大ではあるものの、「閲覧にも書き込みにもアカウントが必要なクローズドなコミュニティ」であることに変わりはない。である以上、その中の情報に検索で到達することができないし、SBMを使って周知することもできない。本来ならリーチし得たはずのSBMに関心があり有益な情報を持っている人が、この研究会の存在を知ることができなかったり、知っていても参加できなかったりした可能性がある。

はっきり言う。「SBMの」研究会なのに「SBMがカバーしていない」場所で行なわれる意味が、全くわからない。最初からブログで告知して、メールで参加者を募るなりして、感想はブログに書いてSBMでブックマークすること、という方法の方が適切ではなかったのだろうか。俺だって、Twitterでたまたまこの話を聞かなければそもそも存在すら知らなかった、いや、「知れなかった」。それから、今回の参加者のブログ記事は情報の共有がしやすいように「SBM研究会」タグを付けてください、とまで指示が出ているにも関わらず、一方でmixiアカウントが無ければ閲覧すらできない場所に感想を書くことを推奨するとはどういうことなんだろう。何か理由があるのなら是非教えて欲しいし、そうでないのなら次回以降は違う方法を検討して欲しい。

サービス提供者の視点で語ってくれる人が欲しかった

それから、若干気になったのは、発表内容がビジネスと学術に偏り気味だったこと。例えば、レコメンデーションやフォークソノミーの研究対象として見た場合に、SBMはデータの集合として捉えられる場合が多い。だけどそれだと、ユーザ同士のコミュニティが作る文化や、元のコンテンツに付加されたコメントが生み出す価値や、UIによるユーザ動向の変化など、SBMという「サービス」に重要な要素が出てこない。

もちろん、学術的な研究対象としては非常に扱い辛いものであることも、ビジネスの観点では優先順位として低いことも、十分にわかる。それから、吉川さんや宇佐美さんの話はその辺にも触れたし、コモンズ・マーカーの紹介もあったわけで、それはそれで大変参考になった。だけど、1セッション使ってその辺を掘り下げてたり一般化したりした話があってもいいくらいのテーマなのに、それが無かったのが残念だ。

最後に

いくつか不満は挙げたけども、各発表は興味深いものばかりだったし、この研究会を通じて知り合えた方々からもすごく刺激を受けた。全体としては本当に有益な時間でした。運営の方、発表者の方、休憩時間や解散した後の飲み会でお話させてもらった方、本当にみなさんありがとうございました。

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