こんにちは、「それは一体誰得なんだ」でお馴染みのfaultierお兄さんだよ!今日はみんな大好きMacRubyをどれだけ無駄遣いできるかを考えてて例のごとく失敗したので、その顛末を教えてあげるよ!
MacRubyでDTを動かしたい
まぁ冒頭書いた通りなんだけど、「Objective-CからMacRubyを利用する - Watsonのメモ」を読んでなんか変なことできないかなーと考えてて、そういや俺ってば見た目に面白い以外は全く使い道のないものを以前作ってたじゃん、と思い出したんだけど、上手くいかなったという話。あ、全く使い道の無いものってのは、もちろん言うまでもなくあいつのことですね。
esotericは構成としては、ソースコードをパースしてSexpにするParserと、それをRuby2Rubyを使ってRubyのコードにトランスレートしてから実行するRunnerでできているので、MacRuby Frameworkを使ってesotericをObjCから呼び出せば、アプリケーションにDTやてってってーでプラグインを書ける仕組みを比較的容易に導入できるかと思います。導入したところで誰が使うのかわかりませんが。少なくとも俺は絶対に使わない。
まずは小手調べのコンパイルエラー
とりあえずMacRubyをDownloadしてくる。最新版の0.5はSnow Leopardにしかインストールできないけどこないだクリーンインストールしたばっかりだから全然問題ないもんね!と勝ち誇ってみせたけど、一体誰に勝ったのかはよくわからない。ちなみにソースからのビルドも時々試みてるけど大体こけるので今回は無難にバイナリをインストール。macgemは0.4のときはまともに使えたもんじゃなかったのでちょっと不安だったけど、Ruby2Rubyも特に問題なく入った様子。なに、こんな拍子抜けするくらいさらっと入っちゃっていいの?とニヤニヤしながら次のコマンドを実行。
$ pwd /Users/taro/Projects/esoteric $ echo $RUBYLIB lib: $ macruby -v MacRuby version 0.5 (ruby 1.9.0) [universal-darwin10.0, x86_64] $ macruby bin/dt -v /Users/taro/Projects/esoteric/lib/esoteric/dt/parser.rb:13: end pattern with unmatched parenthesis: /((?:\xE3\x81\xA9|\xE7\xAB\xA5\xE8\xB2\x9E\xE3\x81\xA1\xE3/ /Users/taro/Projects/esoteric/lib/esoteric/dt/parser.rb:74: end pattern with unmatched parenthesis: /(\xE3\x81\xA9|\xE7\xAB\xA5\xE8\xB2\x9E\xE3\x81\xA1/ dt.rb:3:in `<main>': compile error (SyntaxError) from dt:4:in `<main>'
オゥフ。言われたところを見てみたら、parser.rbの13行目には/((?:ど|童貞ちゃうわっ!)+)…/という正規表現が書いてあった。念のため試してみたけど、Ruby 1.9.1ではちゃんと動いてる。どうも、()の中にASCII以外の文字が含まれてるとMacRubyさんは閉括弧を見つけられなくて正規表現として不正だと言ってくる様子。ソースコードはutf-8で書いてあって、magic commentにもutf-8って指定してて、文字列リテラルだと問題ないのに、正規表現だと駄目。仕方ないのでベタに日本語書いてたところを全部Unicodeリテラルにしてみた。"ど"だったら"\u3069"とか。とりあえずそれでコンパイルできないというエラーは出なくなった。CRubyの方でももちろんちゃんと動く。なんだよ、やればできるんじゃないか、ツンデレか?などと思いつつhi.dtを実行させてみる。
$ macruby bin/dt -v esoteric 0.0.2, DT 0.0.2 $ macruby bin/dt examples/hi.dt parser.rb:160:in `numeric:': ArgumentError (ArgumentError) from parser.rb:80:in `process' from parser.rb:58:in `block' from parser.rb:51:in `parse' from parser.rb:11:in `parse:' from runner.rb:25:in `run:'
ぬぅ。まだツンツンしてやがる。ちょっと勢い込んでしまったけど、どうもまだMacRubyと打ち解けきれてないみたい。ちなみに、CRubyの方でやるとこんな感じになる。
$ ruby -v ruby 1.9.1p243 (2009-07-16 revision 24175) [i386-darwin10.0.0] $ ruby bin/dt -v esoteric 0.0.2, DT 0.0.2 $ ruby bin/dt examples/hi.dt $stack = [] $heap = { } $stack.push(72) $stdout.print($stack.pop.chr) $stack.push(105) $stdout.print($stack.pop.chr) $stack.push(33) $stdout.print($stack.pop.chr) $stack.push(10) $stdout.print($stack.pop.chr) exit(0) Hi!
うーん、ちゃんと動いてるよなぁ。該当の箇所を調べたら、本来encodingがUTF-8のStringが来てなきゃいけないところで、MacRubyの場合はUS-ASCIIなStringが来てしまっている。あるぇ?その文字列がどっから来てるかを辿って行くとARGF.readしてるとこなんだけど、MacRubyでは既にその時点でUS-ASCIIとして読み込んでしまっている。CRubyでやったらちゃんと動くのだから、$stdin.external_encodingはちゃんとUTF-8になるはずなんだけど、そもそもそこがnilだし、opneとかset_encodingとかで指定しても変化なし。force_encodingとかしても上手くいかない。と、このあたりでもっと色々なことがおかしいということに気付く。
MacRubyでStringが期待した挙動をしてない件
いまいち良くわからないので、試しにこんなことをしてみた。
$ cat test_string.rb # coding: utf-8 a = "ど" b = "\u3069" puts "\"ど\".encoding #=> #{a.encoding}" puts "\"\\u3069\".encoding #=> #{b.encoding}" puts "\"ど\" == \"\\u3069\" #=> #{a == b}" puts "\"\\u3069\" == \"\\u0069\" #=> #{b == "\u0069"}" puts "\"ど\" =~ /\\u3069/ #=> #{a =~ /\u3069/}" puts "\"i\" =~ /\\u3069/ #=> #{"i" =~ /\u3069/}" puts "\"i\" =~ /\\u0069/ #=> #{"i" =~ /\u0069/}"
$ ruby testb_string.rb "ど".encoding #=> UTF-8 "\u3069".encoding #=> UTF-8 "ど" == "\u3069" #=> true "\u3069" == "\u0069" #=> false "ど" =~ /\u3069/ #=> 0 "i" =~ /\u3069/ #=> "i" =~ /\u0069/ #=> 0
$ macruby test_string.rb "ど".encoding #=> UTF-16 "\u3069".encoding #=> US-ASCII "ど" == "\u3069" #=> false "\u3069" == "\u0069" #=> true "ど" =~ /\u3069/ #=> "i" =~ /\u3069/ #=> "i" =~ /\u0069/ #=> 0
おぉう…どういうことなの…なんでこんなに違うの…。ちゃんとわかってないんだけど、こんな感じなのかしら。
- MacRubyはソースコードがUTF-8で書かれているものと想定して、それをUTF-16に変換している?あと、magic commentを見てないようで、試しにeuc-jpで書いてみたらバイト列をそのままUTF-16の文字列だと解釈してStringクラスにしていて、化ける。
- IOからの読み込みはASCIIとして扱っている。ARGFでもopenでも同じだった。こちらも環境変数、コードのencoding、magic comment、読まれるファイルのencodingに関わらず同じ。
- String#encodeやString#force_encodingが何もしないでselfを返してるように見える。NSStringのメソッドを使って変換してやれば変わるんだろうか?
- Unicodeリテラルを解釈するときに、\uXXXXの後ろ二桁しか見てないっぽい。"\u3069" == "\u0069"がtrueって何の冗談かと思った。
- Unicodeリテラルの扱いが、文字列リテラルの中なのか正規表現リテラルの中なのかで違っている。"i" == "\u3069"はtrueだけど"i" =~ /\u3069/はfalse。そう言えば、"(ど)"は正しくパースできるのに/(ど)/はSyntaxErrorになるところを見ると、Unicodeリテラルに限らずそもそもそこのパースのロジックが微妙に統一されてない感じ。
さてどうしたもんかな…。日本語を正規表現でマッチさせてるところがまずい(ちなみにBrainf*ckは完全に、Whitespaceは不完全ではあるけど一応動いたので、ソースコードと入力にNON-ASCIIな文字列が含まれてなければ問題ないらしい)なら、完全にバイト列だと思って扱ってやるとか、正規表現じゃなくて==しか使わないとか(もちろんバイト単位で比較)、ObjCでまず入力を正規化してやった上でMacRubyに渡すとか(本末転倒!)、そういう風にすれば動かないでもないかもしんないけど、そういう文字列処理みたいなObjCであんまり書きたくないところをRubyでさらっと書けるから良いんであって、それ以外のところはそもそもObjCで書いたって大して難しくない。performSelectorとかランタイムAPIとか使いまくればいいんだよ!というわけでちょっと残念な感じ。
余談
esotericに付属のesocコマンドを使うとDTやBrainf*ckのコードをRubyのコードに変換できるので、出来たコードをmacrubycにかけてやれば最終的にMacOSXで動作するバイナリができます。DTのコードがなんと高速で動作するネイティブのバイナリに!…と思ったけど結構遅かった。なんかこう、色々読み込むののオーバーヘッドが馬鹿にならない感じ。でも、普通にRubyを使うとstack level too deepで動かないような深い再帰のコードでも動いたりする。ていうかexamples/fact.*、macrubycでコンパイルしないと動かないんですけど。何でこんなコード入れてんだ俺。